自閉症の治療

自閉症の治療

 


 

社会に適応できる行動の習得を図る

 

自閉症の治療は、言葉や集団行動、社会生活のルールを身につけていく治療教育が基本です。

 

課題や言葉がわかるような工夫を

 

知覚の認知がうまくできない自閉症の子どもに対して最も大切なことは、適切な情報を伝え、社会に適応する行動ができるように指導していくことです。

 

教える側の工夫が鍵を握っているといえます。

 

 

【視覚から情報を伝える】

自閉症の子どもの指導でまず大切なのは、何から取りくんだらよいかをわからせる工夫です。

 

指示は絵や文字にして、目で見てわかるような形にすると伝わりやすいようです。

 

 

【注意をひくために声をかける】

課題に注意を向けさせにくいのも自閉症の特徴です。大きな声で名前を呼び、わずかでも注意を向けたら具体的な課題を示し、反応があったら大きな声でほめます。

 

反応を評価してやることで、注意を向ける行動を定着させていくようにします。

 

 

【できる課題を選ぶ】

自閉症の子どもが与えられた課題に取り組まないのは、したくないからではありません。まずは、こなせそうな課題を与えて、「これならできる」「できた」と達成感をもたせることが大切です。

 

簡単なパズルや遊具で未完成の課題を与え、仕上げは子どもがするなどの方法がとられます。

 

丸や三角などの単純な図形を描いて塗らせると、自分で完成した喜びを感じることができます。やさしいレベルから徐々に始めていきます。

 

 

【環境を整える】

自閉症の子どもは隣の席の子の食事を食べてしまうようなことをします。自分の場所という意識や、所有の概念を理解していないのが原因といわれます。

 

色違いのランチョンマットを敷いたり、色テープで境界をつくって視覚的にはっきり区別したり、つい立てで仕切るなど、所有や領域の概念を指導します。

 

認知能力を高めていくためには、環境を整えて子どもの欠陥を補うことも必要です。

 

 

【はっきりと褒め、はっきりと叱る】

自閉症の子どもは罰の意味を理解しにくいようです。イタズラをしたからお菓子をあげないという罰を与えるようなやり方では、あまり効果はありません。イタズラをしたことと、お菓子をもらえないこととの因果関係がわからないからです。

 

うまくできたことや好ましい行動は、はっきりと言葉に出して褒め、その行動を定着させるように、叱り方と褒め方の工夫をします。

 

叱るときは、その場ですぐに1回だけ強く叱ることがポイントです。原因となった行動はやめたのに、いつまでも説教していると、何が悪いのかわからなくなり、かえって混乱を招きます。

 

 

【対人関係を身につけさせる】

自閉症の子どもも成長とともに、子どもの集団に加わろうという様子をみせるようになります。ただし、人の気持ちを察しにくいため、対人関係をうまく成立させることが難しいといわれています。

 

ほかの子どもたちと同じ行動がとれなくても、集団のなかで自分のできることを少しずつ増やしていくことが大切です。

 

時間内は座っていられることや先生の指示に従えるなど、集団のなかでの行動や技能を身につけていくと、少しずつではあっても人間関係がスムーズになっていきます。

 

 

家庭でも社会的行動の訓練を

 

自閉症は長く続く障害ですから、できるだけ早くから治療教育を受けさせることが望ましく、家庭での対応が治療の助けになるように努めましょう。

 

例えば、名前を呼ぶのは用があるときだけにします。名前を呼ぶということを意味のあるものにするためで、用がないときに名前を呼ぶのは避けましょう。

 

 

話しかけるときは短い言葉でゆっくり、言葉がすべて耳に入るように気をつけます。また、歌を歌いながら手を動かす遊びや、テレビ番組の体操などを親も一緒にします。簡単なお手伝いも積極的にさせるとよいでしょう。

 

トイレの訓練では、下着を脱ぐことから後始末まで、実地に教えます。

 

 

成長するにつれて、道路を歩くときの安全について、電車に乗るマナーについて、買い物についてなど、日常のあらゆることを具体的に教えていきます。

 

社会的な行動は繰り返し指導すれば、一人でできるようになり、親の手を離れることも可能になります。

 

 

学校を選ぶときは

 

幼児期に障害児保育を受けていても、学童期に達すると自閉の程度や知能のレベルによって、普通学級に進む場合もあります。

 

症状によっては、個々の子どもに適した情緒障害学級や養護学校などの教育施設を選ぶことになります。

 

 

特に気をつけたいのは、文字が書け、計算ができるなど知能レベルがある程度高い子どもの場合です。普通学級に進ませても、文字と計算はよいのですが、ほかのことがうまくいかないため、子どもが無力感をもつことがあります。

 

集団生活や社会生活のルールをきちんと身につけていないと、ほかの子どもたちと一緒の行動がとりにくいからです。子どもの知能のレベルのみをみるのではなく、自閉の本質を理解し、教育していくことが大切です。

 

 

発達に遅れがあるからといって、いつまでも子ども扱いせず、成長を促すようにしましょう。

 

成人してからのことも考慮して、どんな学校教育が必要なのかを、専門家に意見を求めながら親が判断し、選択していくことになります。

 

 

治療教育にはパズルやカードなどさまざまな玩具が利用されます。

 

机の前に座っての作業や手の使い方で、さまざまな課題が少しずつ完成できるようになります。

 

自閉症の薬物療法

 

自閉症の治療は訓練、指導、教育が中心ですが、自閉症には行動上の問題がみられる場合もあります。

 

投薬治療は行動上の問題を抑え、治療の成果を上げるために行われます。行動の問題には、

 

  • 1)強迫的常同行動を規制されたときなどに起こる、いわゆるパニック
  • 2)食欲不振、拒食、過食、偏食、異食、嘔吐など食事に関する問題
  • 3)不眠、浅眠、リズムの乱れなど睡眠の障害
  • 4)頻尿、尿失禁、不適切な排便場所など排泄に関する問題
  • 5)指しゃぶり、爪かみ、抜毛症なとの神経性習癖
  • 6)その他の習癖の異常

 

などがあります。それぞれ症状に合わせ、抗精神病剤や脳機能改善剤、安定作用がある抗てんかん剤や抗不安剤、抗うつ剤、就眠薬などが用いられます。

 

このような対症療法的な薬物療法から一歩進んで、病因に作用し、訓練、指導、教育を円滑に行うための一手段としての薬物療法の研究も行われています。

 

 

 

 


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