青年の自立を阻むのもとは

青年の自立を阻むのもとは

 


 


青年の自立を阻むのもとは

 

青年期は、仕事や職業を通してどのような役割を果たしていくのかという自己探究と並行して、「自分とは何か」 という根本的な問いかけに答えを出す大切な期間です。

 

エリクソンは青年期の発達課題として、「自分という感覚、自分らしさの自覚、自我同一性」 の確立を説いていますが、この時期には「自分は何をしたいのか」 「自分には何が向いているのか」 といった自己探究心が急速に深まっていきます。

 

 

また、この時期に特有の課題としてあげられるのが、精神的自立の問題です。

 

 

思春期には親への依存から離れて独り立ちを進めるうえで激しい精神的葛藤を経験しますが、自分を子ども扱いする親から離れ、自己を確立していくという葛藤は、青年期にピークに達します。

 

そこで、青い鳥症候群の若者たちについて、自立という観点から、親子関係や、その背景にある現在の社会環境などを整理してみましょう。

 


目的意識がなくなる教育体制

 

現在、日本では、若者が自己を確立しにくい社会状況にあるといえます。

 

その大きな原因の一つは受験を中心とした教育体制にあります。

 

 

ちなみに高校進学率についてみると、1960年にはやっと50%を超えた程度でしたが、1970年には70%、1980年にはほぼ90%に達しています。

 

また大学進学率は1960年には10%程度でしたが、1990年代にはおよそ40%に達しています。

 

大学の大衆化がいわれて以来、子どもたちは主に母親によって学童期から勉強に駆り立てられ、偏差値という枠にしばられ続けてきたといえます。

 

 

子どもたちは親に決められたレールの上をひた走り、大学進学に有利な高校を目指して、ひたすら勉強に向かいました。

 

こうした受験体制は、大学受験まで引き継がれ、自分が本当は何をしたいのかを考える暇もなく、とりあえず大学に進学する者が多数を占めるという状態を生みだしてきました。

 


過保護な母親と自己主張のない子ども

 

さらに高度経済成長期以後、父親は外で働くだけの存在になり、家庭の中で母親と子どもの不即不離の依存関係が強められました。

 

子どもは常に母親の保護下に置かれ、母親の指示に従うようになっていきました。

 

 

その結果、子どもは青年期に入っても、母親に言われるままに行動し、親に反抗することもなければ自己主張することもない、非常に聞き分けのよい素直な青年として、いわば幼児のような状態のままで成人していきます。

 

独立心や責任感の芽ばえなど、青年がこの時期にやり終えておくべき発達課題は手つかずのまま持ち越されてしまうことになります。

 

 

例えば、思春期に迎える第二次反抗期は、親から精神的に離脱することが課題になります。

 

この時期の子どもは親や大人に反抗し、自己主張をすることで、さまざまな葛藤に襲われますが、自力でその苦しさを克服し、乗り越えていく過程で徐々に親離れ(自立)していくものです。

 

 

その過程では、「自分とは何か」という自己への問いかけを繰り返し、自分を見つめ直すことになります。

 

この自分を見つめ直すという営みがないとアイデンティティー(自我同一性)の確立も困難になります。

 

 

母親が溺愛から子どもに介入、干渉を続け、大人になるうえで誰もが通らなければならない反抗期を押しつぶすことは、子どもの成長をゆがめてしまうことになります。

 

青い鳥症候群の青年をみると、親が支配的で、子どもへの干渉がはなはだしく、わが子の交遊などにまで介入している場合が多いようです。

 

そのため、子どもたちは思春期のころから始まるこれまでと違った友人関係を享受できなくなり、成長へのステップを踏みはずすことになります。

 

 

友人関係など、人間関係の広がりを含め、成長過程でクリアすべき課題を棚上げしたまま、青年が大学進学、就職、結婚に至るまで、親が準備したレールの上を進んだとします。

 

すると親離れができず、依存心の強い、自己決定もできなければ自己責任もとれないアンバランスな人間になってしまうのは、当然の成り行きといえます。

 

このようにみてきますと、若者がなかなか大人になれないのは、本人にだけ原因があるのではなく、親の側にも原因があることがわかります。

 

 

かつては子だくさんで、母親は時間的にも経済的にも余裕がなく、子ども一人ひとりに細かく目を配るようなことは、とてもできませんでした。

 

ところが、時代が変わり、次第に子どもの数が減り始め、暮らしが豊かになるにつれて、少ない子どもに対して、親がその巣立ちを黙ってみていられなくなってきた結果ともいえます。

 

 

親離れできない子どもを巣立たせるには、親があえて子どもを突き放すことも必要です。

 

しかし、少子化した現代の家庭では、親のほうがわが子に巣立たれる寂しさに耐えかねて、子どもを手元に置こうとするあまり、かえって子どもの自然な発達、自立を阻害してしまっているといえましょう。

 


子ども中心の家族関係

 

日本の家庭では、食事一つとっても子ども中心です。

 

多くの場合、結婚後、第一子が誕生すると、その時点から赤ちゃん中心に夫婦関係も変化し、子どもを挟んで、父親と母親の関係に移っていきます。

 

お互いに呼び方も「お父さん」「お母さん」あるいは「パパ」「ママ」へと変わります。

 

 

一般的に、子どもが誕生するころには、職場での夫の仕事は責任の重い多忙なものとなり、夫はほとんどの時間を家の外で費やすようになります。

 

妻は家庭で、多くの時間を家事、特に育児や子どもの教育に当てるようになります。

 

 

夫婦の生活の場が明確に分かれ、共有する時間は少なくなり夫と妻の関係は希薄化していきます。

 

家族とのかかわりもさることながら、情報化時代のなかでマスメディアやコンピューターゲームの影響も見逃せません。

 

 

ゲームやテレビ画面の中では、努力をしなくてもいつも英雄や主人公だったのに、実生活ではわずらわしいことばかりだと感じ、面倒な問題が起こると、ゲームのスイッチを切るように簡単に現実から逃避しようとする傾向があります。

 

家庭では、それが許されてきたのです。

 

 

こうした環境で育った子どもたちが、現実の社会と向かい合うときには、さまざまな行き違いが生じるのは当然のことでしょう。

 

 

このような自立できない子どもと自立できない親の問題を解きほぐすには、子どもを甘やかしっぱなしにしている家庭構造を見直すことが大切です。

 

家庭内で父、母、子の三者の位置関係をはっきりさせ、子ども中心の生活を改めましょう。

 

 

子どもが独立していくことは、親側、特に母親には大きな喪失感を感じさせます。

 

子の独立を温かく見守ることができるかどうかは、ひとえに母親がその分離体験をどうとらえるか、個人としてどう生きてきたかによります。

 

 

青い鳥症候群の若者たちが出現した原因としては、現代の子育てのあり方、そのような子育てのひずみをつくりだす土壌となった社会環境があげられますが、その病理に対する治療には、大変な労力と時間がかかります。

 

 

 


合わせて読みたい記事

青い鳥症候群とは?
思春期・青年期の発達に関して、現代の青年を特徴づけるいくつかのシンドローム(症候群)がありますが、その一つが、「青い鳥症候群」です。
青い鳥症候群にみられる共通する外面的特徴
青い鳥症候群の青年は、総じて職場で浮くことが多いようです。この症候群の人に共通してみられる外面的な特徴はいくつかありますが、第一に、尊大な態度があります。
青年期の成熟拒否とモラトリアム
現代の青年は、青年期の時間の延長とともに、このモラトリアム的生き方を持続させ、大人になることを先延ばしにしているといわれています。
青い鳥症候群の治療は親子ともに必要
青い鳥症候群の治療は、専門家のカウンセリングを中心に行われ、必要に応じて精神安定剤などの薬物療法も受けます。本人のカウンセリングと並行して、両親もカウンセリングの対象になります。

このページの先頭へ戻る