ここではないどこかを求める心理

ここではないどこかを求める心理

 


 

どんな生き方をしたらよいのか、何が自分にとって最良の選択なのかがわからない、あるいはどこにも自分のアイデンティティーを確立・見いだすことができないという心理の根底には、自分以外の何かが人生を変えてくれるのではないかという依存的な姿勢があると考えられています。

 

 

キャリアを積んで仕事に打ち込みながらシングルライフを満喫する女性、結婚しても出産せず、夫婦二人の生活を大切にする女性、また専業主婦として家事や育児をしながら趣味を楽しむ女性など、さまざまな姿を思い描いて、心は揺れ動くものです。

 

 

1992年に出版された谷村志穂氏のノンフィクション『結婚しないかもしれない症候群』では、不安や葛藤を抱えながら、恋愛や結婚、家庭、仕事などをめぐって、自分の生き方をみつけようと孤軍奮闘する若い女性たちの姿が描かれ、話題を集めました。

 

 

本の中には、例えば、独身を通す覚悟を決め、とりあえずは安心して一生住める場所だけは確保したいとマンションを購入した女性、老後の生活を考えて年金型生命保険に加入したり、親に生命保険をかけた女性、さらには、結婚しなくても子どもだけはほしいと一人で出産・育児をすることを決意した女性や子離れしない親のために結婚こ踏み切れずに悩むケース、結婚生活に夢をもつことができないと複数の相手と恋愛を楽しむケースもみられます。

 

 

女性の生き方が多様化してきている近年では、自分の生き方の選択に迷いが生じるのはある意味で当然のことといえるでしょうが、なかには、そうした迷いを正面から受けとめることができず、漠然とした期待感や不安感だけがつのり、自分自身で選択や決定をすることができない人がいます。

 

 

そうした決断の先送りの背景には、「どこかに私の本当の居場所がある」「今とは違うもっと素晴らしい自分がいるはず」といった幻想を膨らませ、現実と直面することを避ける未熟さがあるとされます。

 


 

脱アイデンティティ

若者とアイデンティティ

差別とアイデンティティ

 

また、雑誌やテレビなどでとり上げられる華やかな職業や女性の新しいライフスタイル、自分探し、プラス思考といったテーマやキーワードが、「素晴らしい自分」という幻想をいっそうかきたてる誘因になっていることも否定できません。

 

 

このような依存的、自己愛的な性格形成には、自我が形成される時期の親子関係や家庭の養育環境がかかわっていると考えられています。

 

親に対して反抗することがなく、長い間期待どおりに成長してきたいわゆる「よい子」が、社会に出て不適応を起こすケースはしばしばみられます。

 

 

親とぶつかりながら自分の意志を貫き通したり、自分らしさを確立することができなかった点が大きく影響しているといえます。

 

 

 


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