自殺の予兆 決行する前のサインを見逃さないことが重要

自殺の予兆 決行する前のサインを見逃さないことが重要

 


 

心理学的剖検から見る自殺の予兆

 

自殺企図者はうつ状態になる

 

自殺者のうち何らかの精神疾患にかかっていたと思われる人は多く、特にうつ病は最も頻繁にみられるものです。

 

自殺既遂者の追跡調査は、本人から直接答えを得ることはできないため、自殺者のことをよく知っていたと思われる人からの情報によって、生前の心理的な状況や背景を評価するしかありません。

 

この方法を心理学的剖検といいます。

 

 

ある精神科医は、心理学的剖検によると自殺既遂者の70~80%は何らかの精神疾患にかかっており、そのうちの60~70%はうつ病であったと報告しています。

 

自殺の背景には何らかの精神障害が濃厚に関係し、特に40~50%の自殺者がうつ病あるいはうつ状態にあったと考えられています。

 

 

うつ病患者の自殺防止策としては、周囲の人が希死念慮を自殺決行のサインとして見逃さないことが重要になります。

 

※希死念慮とは? 死にたい。死ねば楽になる。などの自殺願望

 

実際に自殺という行動をとるには至らないまでも、例えば躁うつ病患者の80%以上には希死念慮がみられるといわれています。

 

 

希死念慮は自殺へのシグナルとなっていることが多く、自殺行為を決行した人の80%は、事前に希死念慮を周囲の人にもらしています。

 

希死念慮という形の自殺へのシグナルは、直接あるいは間接的な方法で周囲に伝えられているのです。

 

 

自殺を企図した人の60%は配偶者に希死念慮を伝え、50%は家族、35%は友人、18%は医師に伝えています。このことからも、うつ病やうつ状態の人の家族が希死念慮の発信に気づくことの重要性がわかります。

 

アメリカの精神医学者キールホルツは、うつ病患者の自殺の危険因子として、

 

「激しい焦燥不安や慢性的な不眠、過度で統御不能の攻撃性、うつ病相の初期・回復期・混合期、思春期や妊娠期、産褥期、更年期などの危機の年代、重度の自責感と不全感覚、不治の疾患、心気妄想、アルコール症」

 

などをあげています。

 

 

自殺を企図する確率のきわめて高いうつ病の患者には、医師の診断と治療を確実に受けさせるとともに、家族や周囲の人がうつ病の症状などの基本知識をもって、患者が自殺を決行する前の予兆をキャッチし、医師にフィードバックするといった総合的な対処が必要です。

 

 


 

予兆を見逃さないために、自殺に対する誤解を訂正する

 

自殺者に対しては、ともすれば偏見を抱きがちです。

 

シュナイドとファブロウが提示した自殺についての誤った概念を参考にして、誤解を訂正することも必要です。

 

①自殺を口にする人は、自殺をしない傾向がある

自殺者の10人に8人までは、自殺の意思表示をしています。

 

②自殺は予告なしに生じる

悲嘆の多くは信号です。それを注意していれば自殺は防止できます。

 

③自殺をする人は完全に自己断絶している

治療を受けたいと希望する多くの人は、自殺から救ってほしいという願望を示しています。

 

④自殺は長期間持続する問題である

悲嘆の期間はそんなに長くは続きません。介入や治療は悲嘆を軽減させます。

 

⑤自殺未遂後の改善は危険が過ぎ去ったことを示している

明らかに軽快期に再び症状が悪化することがあります。3か月間は傷つきやすい状態にあると思わなくてはなりません。

 

⑥金持ちと貧しい人は自殺しやすい

自殺はすべての社会的経済的階層にまんべんなく生じます。

 

⑦自殺傾向は遺伝する

自己破壊傾向が遺伝するという証拠はありません。

 

⑧すべての自殺者は精神病で、精神病理学的所見を示している

苦悩にあえぎ、悲嘆にくれることがあっても、必ずしも病気とは限りません。

 

自殺企図者の多くは何らかの予兆やサインを発することが多く、自殺の衝動も一時的なものであることが大半です。また、未遂者は再び企図する割合が高いものです。

 

自殺願望に陥った悩める人を孤立させず、周囲が十分な知識をもって適切に対応すれば救えることも少なくありません。

 

 

まず、うつ病・うつ状態の有無の点検が必要です。もし思いあたる人が身近にいるなら、素人判断をせずに専門家の力を借りるのが得策です。

 

ストレスの多い社会では、あらゆる年代において自殺が増えると予測されます。

 

精神的にゆとりのある生活や生き方を、個人や家庭だけでなく、職場や社会全体の問題として考えることが重要です。

 

 

 


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