特定の恐怖症・社会恐怖の分類

特定の恐怖症・社会恐怖の分類

 

 

特定の恐怖症

 

特定の恐怖症は、不安障害のなかでもよくみられるもので、日本人の5~12%は一生のうちの6か月以上、何かしらの恐怖症にかかった経験があるというデータがあるほどです。

 

発症の多い年代は小児期と20代半ば前後です。

 

 

恐怖の対象が限られているため比較的対象から逃れやすく、その意味では生活に支障が出るほどの重大な問題にはならないケースも多いものです。

 

 

例えば、高所恐怖の人は、高いところへ行かなければ発作は起きず、電車恐怖の人はタクシーなどほかの交通手段を使って移動すればよいからです。

 

しかし、なかには特定の物や場所に強い恐怖感を抱き、それを異常なまでに避けようとするために日常生活や人づき合いが困難になってしまう場合があります。

 

ただし、苦痛の原因がわかっているので、心の負担もそれほど重くありません。

 

 

特定の恐怖症は、恐怖の対象によって、動物型、自然環境型、血液・注射・外傷型、状況型、その他に細分化されます。

 

いずれも、恐怖の対象に出合うとすぐに不安の発作が始まり、対象に近づくほど不安が強まり、対象から離れると治まります。

 


 

 

特定の恐怖症

社会恐怖

特徴

ある特定の動物や品物、状況を極端におそれて、それらと出合うことを避けます。過去に何かによって激しい恐怖を体験すると、それが恐怖の対象となります。 人前で恥をかくことや、 他人に不快感を与えることを極端におそれ、人に会うことを避けます。

発症しやすい年齢

小児期、20代半ば 15~20歳

タイプ

動物型…ヘビ恐怖など
自然環境型…雷恐怖、地震恐怖、高所恐怖など
血液・注射・外傷型…血液恐怖など
状況型…高所恐怖、閉所恐怖、エレベーター恐怖など
その他…空間恐怖、がん恐怖など

スピーチ恐怖
発汗恐怖
接待恐怖
会食恐怖
宴会恐怖
視線恐怖など

 

動物型

 

恐怖の対象が動物や虫などの生物で、犬にかまれるのではないかと犬を避けたりします。子どもに多い型です。

 

自然環境型

 

雷や台風、水など、自然環境が恐怖の対象です。

 

親しい人が落雷で死亡するといった経験がもとになり、雷を連想させる強い光や大きな音に恐怖を抱くようになる雷恐怖などがあります。

 

血液・注射・外傷型

 

血液や外傷を見たり、注射など自分が痛い思いをしたような医学的処置がきっかけで発症します。

 

状況型

 

公共の交通機関、橋、トンネル、エレベーターといった閉ざされた空間など特定の状況への恐怖です。

 

その他の型

 

壁が倒れてくるのではないかとおそれる空間恐怖症などがあります。

 


 

 

このように、特定の物、場所、状態に並外れた恐怖心を抱く状態が特定の恐怖症です。

 

恐怖の対象は、一つの場合もあれば複数のケースもみられます。

 

 

特定の恐怖症は、対象となったものによって激しい恐怖の体験をしたことがきっかけとなって発症します。

 

その体験の直後に始まることもあれば、幼いころの体験が大人になるにつれて増幅され、何かのはずみで発症することもあります。

 

 

強い恐怖感で苦しんでいる人は、自分の恐怖感が不合理だということに気がついています。

 

しかし、恐怖心をコントロールできないため、対象を避けたり、避けられない場合は強い苦痛を強いられるのをひたすら耐え忍ぶことになります。

 


 

特定の恐怖症の具体例

 

特定の恐怖症の具体例には、次のようなものがあります。

 

高所恐怖

高いところで足がすくんでしまい動けなくなったり、めまいがしたりします。

 

はじめは高いところを避けるだけですが、症状が進むうちに、階段を上がる、ベランダに出るといった、高所のイメージを抱かせるものに恐怖感を抱くようになります。

 

さらに悪化すると、高いところを想像しただけでも足が浮くように感じて強い恐怖感におそわれます。

 

閉所恐怖

狭く閉ざされた場所をこわがります。

 

会社の倉庫や会議室までこわがるようになると、仕事を続けるのが困難になってしまいます。

 

 

電車やバスを、狭い空間としてこわがるケースもあります。

 

自宅では、トイレのドアは開けたまま使えますが、外出先ではドアを閉めなければならず、トイレに行くたびに非常な苦痛を味わうか、尿意を感じても我慢したりします。

 

OA恐怖

パソコンが苦手なことが恐怖感にまで高じてしまったものです。

 

仕事で操作しなければならないときに動悸が激しくなったり、汗が噴き出したりします。

 

パソコンから逃れようとして、会社を休むようになるケースもあります。

 

 

血液恐怖

血液を見ると卒倒します。

 

小さな切り傷から出たほんの少しの血を見ただけで、顔が青ざめ、表情がこわばってしまう人もいます。

 


 

社会恐怖

 

人前で恥をかいたり、人から変にみられること、自分が他人に不快感を与えたりするのをおそれ、人とのかかわりに強い恐怖感を抱くものです。

 

 

日本人は対人緊張の強い民族だといわれていますが、社会恐怖では、緊張することに恐怖を感じるあまり、人の集まる場所を極端に避けるようになります。

 

また、仮に人の集まる場所に出かけたとしても、自分のことを他人が笑っているのではないかと思ったり、失敗してしまうのをおそれたりして落ち着きません。

 

 

対人間係に大きな変化が出てくる思春期から青年期、年齢でいうと15~20歳くらいで発症しやすいといわれています。

 

特定の恐怖症に比べ社会恐怖の人は少ないとみられるものの、現代人が他人とのかかわりを絶って生活することは不可能です。

 

人に会うたびに自分の目つきが変なのではないか、あの人は自分を笑っているのではないかなどと考えるので、心に大きな負担がかかってしまいます。

 

その意味では、比較的恐怖感から逃れにくいといえます。

 

 

また、恐怖の対象がほとんど社会生活全般にわたるケースもあり、このような場合は通常の社会活動がほとんど不可能になってしまいます。

 

まったく外出できなくなるケースも少なくありません。

 

 

社会恐怖の人は、人とのかかわりがうまくいかない原因が自分にあると考えるケースが多いものです。

 

自分に責任を感じる分、苦痛も大きく、症状に悩んで精神科を訪れるのは、特定の恐怖症の人よりも多いといわれています。

 


 

会食恐怖

 

食事そのものは平気でできますが、多人数で一緒に食べることを極端におそれます。

 

大事な会食で緊張しすぎて手がふるえ、フォークを落としてしまったのをきっかけに発症し、以来、会食のたびに苦しい言い訳をして欠席したり、自分だけ食べないビジネスマンもいます。

 

何とか会食の苦痛を乗り越えたものの、相手と別れた直後に吐いてしまうケースもあります。

 

視線恐怖

 

他人の視線を極端におそれるものです。

 

人に見られると思っただけで逃げ出したくなり、ひどくなるとまったく外出できなくなります。

 

 

他人の視線に敏感になりすぎ、視線から逃れようとして、逆にまったく他人の視線を感じなくなってしまうことがあります。

 

これを視線平気症候群といいます。

 

 

また、自分の視線がほかの人に変と思われているのではないかという考えにとらわれる場合を自己視線恐怖とよびます。

 

ただし、同じ「恐怖」と名のつく疾患でも、自分の外見が醜いと思い込み、それによって他人に不快感を与えているのではないか、友だちとうまくいかないのは醜い顔や体形のせいではないかと苦しむ醜形恐怖症は、精神病的色彩が強く、不安障害とは区別してとらえられています。

 

 

自分のからだが嫌なにおいを発しているのではないかと気になって、1日に何度もシャワーを浴びたり消臭剤を使ったりする自己臭恐怖も同様です。

 


 

強迫性障害

 

強迫性障害は、本人の意思とは無関係に、ある事柄が繰り返し頭に浮かんで離れなかったり(強迫観念)、決まった行動(強迫行為)を繰り返さないと安心できなくなるものです。

 

 

わかりやすい例としては、不潔恐怖と洗浄強迫の例があります。

 

不潔恐怖では、何かを汚いと感じて触れなくなったり、異常に清潔にこだわってしまいます。電車やバスのつり革、ドアのノブなどが対象となりやすいようです。

 

友だちの使ったタオルに触れられず、人間関係にひびが入ってしまうケースもあります。

 

汚い物に触らないために夏でも手袋をしたり、トイレを使う前に除菌剤で入念に便座をふいたり、自分専用のコップを持ち歩くなど神経質な行動がみられます。

 

 

不潔恐怖の人は、不潔を避け続ける結果、不潔と思われる物を何度も洗わないと安心できない洗浄強迫の症状が出てきます。

 

この場合、不潔をおそれるという強迫観念が根底にあって、それが洗浄強迫という強迫行動に出ているといえます。

 

 

鍵をかけたか、タバコの火を消したか、郵便物に切手を貼ったかなど、自分が忘れたのではないかという思いにとらわれる確認恐怖も、強迫性障害でよくみられるものです。

 

 

ほかにも、強い恐怖心から強迫行動が出てくるケースがいくつか知られています。

 

例えば、自宅でも旅行先でも必ず枕を東に向けて寝る、靴下は右足から履くというように縁起をかつぎ、それを頑固に守ろうとする縁起恐怖もその一つです。

 

縁起恐怖のうち数字にこだわる場合を、特に数字恐怖とよびます。

 

 

親の影響で幼いころから縁起をかつぐ習癖が身についてしまったある教師のケースでは、「死」をイメージさせる「4」という数字に恐怖を感じて、四郎という名前の生徒を無視したり、授業で4のつく言葉が出てくるとどもってしまうといった強迫行動がみられたと報告されています。

 

 

自分が刺される、他人を刺してしまうといった恐怖感から、先のとがったものをこわがって避けるようになる尖端恐怖(せんたん)も知られています。

 


 

心的外傷後ストレス障害(PTSD)

 

危うく死にそうになったり、大けがをしそうになったり、あるいはそうした現場を目撃したり、また、親しい人が思いがけず亡くなったりするといった極度のストレスによって起こるもので、強い恐怖感や無力感、または戦慄を伴います。

 

 

経験した出来事がいろいろな形で再体験されることがあります。

 

例えばエレベーターで事故にあった女性が、エレベーターを見るたびにそれが誘因となり、強い心理的苦痛を引き起こすといったケースがみられます。

 

急性ストレス障害

 

外傷後ストレス障害と同じように、危険な目にあったり目撃したりした場合に起こるもので、現実感がなくなってぼうっとしたり、出来事の重要な側面を思い出すことができなかったりします。

 

情緒が不安定になり、何でもないことで泣いたり、激しく怒ったりする場合もあります。ただし、1か月以上続くことはありません。

 

全般性不安障害

 

人生のさまざまな出来事または活動に対する過剰な不安と心配があり、少なくとも6か月はそうした状態が起きる日が続いているものです。

 

いったん不安になると筋肉がふるえたり、下痢や頻尿などの身体症状が出ることもあります。

 

特に子どもの場合は、走るのが遅いために運動会に出たくない、あるいは劇を演じるのが不安だといった過剰不安が多いといわれます。

 

一般身体疾患による不安障害

 

からだに疾患があることが直接的な原因となって起こるものです。

 

不安障害を起こす身体疾患としては、甲状腺機能低下・亢進症や低血糖のような内分泌疾患、うっ血性心不全や肺塞栓症などの循環器系疾患、慢性閉塞性呼吸器疾患や肺炎といった呼吸器疾患、ビタミンB12欠乏症をはじめとする代謝疾患、脳炎などの神経疾患があります。

 

物質誘発性不安障害

 

アルコールや麻薬、一部の向精神薬などの中毒および離脱に関連して起こるもので、顕著な不安、パニック発作、強迫観念または強迫行為を伴います。

 


 

大人と子どもの違いに気をつけて

 

特定の恐怖症や社会恐怖の患者は、大人の場合、自分の抱いている恐怖感が不合理だと気づいているのが通常ですが、子どもは不安や恐怖を抱えていても、まだ自分の精神状態が常識的かそうでないかを判断することはできません。

 

 

また、不安を誘発する対象に出合ったときの反応も、大人の場合、パニック発作などの形で現れますが、子どもは泣いたり、動作が止まるなど、一見して恐怖に対する反応とはわからない形をとることが多いものです。

 

 

さらに、自分の恐怖や不安についてうまく説明できないために、心のなかでふるえている子どももいます。

 

 

子どもに多い不安障害に、分離不安障害があります。

 

分離不安障害は、母親をはじめとした家族や親密な親族から離れることに過剰な不安を抱く状態です。

 

 

母親が事件の被害者になるのではないか、自分が誘拐されるのではないかなどと、非現実的な恐怖を伴うこともしばしばあります。

 

もし、深刻な状態にあるなら早めに精神科などに相談するようにしましょう。

 

 

トイレの花子さん症候群

 

一昔前、小学生の間では、「トイレの花子さん」という怪談が大きな話題となりました。

 

小学校のトイレに住む花子さんとよばれる幽霊の話ですが、この花子さんに対する恐怖から、学校のトイレに行けない、学校のトイレではうまくおしっこができないと訴える子どもたちが出てきました。

 

 

学校のトイレを避けるためにトイレを我慢しすぎたり、途中で排尿をやめる習慣がついてしまい、おもらしをしてしまったり、尿路感染を起こすケースもみられます。

 

こうしたケースを「トイレの花子さん症候群」とよぴます。

 

 

排尿の仕方を覚える年代は、まだ心理面が発達しておらず、心配事や恐怖によって簡単に間違った習慣が身につく可能性があります。

 


 

 

 

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