森林浴が健康によい!? さまざまな森林浴の効果と相乗作用

2020年6月28日

森林浴が健康によい!? さまざまな森林浴の効果と相乗作用

健康に及ぼす森林の好影響は、フィトンチッドだけでなく、ほかにもいくつかあげられます。

緑色の精神に及ぼす効果

森林浴の利点は、森に入るとあたり一面が緑一色という色の効果です。

色彩心理学の研究によれば、緑は安心を与える色とされています。 赤や黒がある種の精神疾患をもつ人には恐怖感情を引き起こし、ときには妄想まで抱かせてしまうのとは対照的に、緑はどんな人にも、どんなときにも安心や安らぎを与えてくれる色です。

交通信号は緑色で安全を示しているのも、この緑色の特性を利用したものといえます。

ある神経症の患者は都会に出てきて、初めのころは刺激的で楽しかったのですが、ある日、赤や黄色、紫の照明の飛び交うクラブに出かけていってから、すっかり落ち着きをなくし都会で生活をしていく自信を失いました。

結局、その患者は精神科医のアドバイスを受けて、山間部にある郷里に戻り家業の農業を手伝うことにしました。
毎日緑に囲まれて暮らすようになって落ち着きをとり戻し、神経症の症状は治まりました。

緑がなぜ私たちに安心や安らぎを与えるかというと、緑を目にしたときの脳の反応は、赤を見たときよりもずっとゆるやかだからです。

赤や黄色を見たとき、私たちの脳細胞が興奮するまでの反応時間は短く、緑や灰色に対しては反応時間が長くなります。

また、光を放っている発光体で赤、青、緑を比較してみますと、空の青の色は私たちの目に飛び込みやすく、この三つの色のなかでは、緑が一番ゆっくりと私たちの目に入ってきます。

緑はそれだけ刺激が弱く、脳細胞に与える刺激もゆるやかで、その分私たちの気分をゆったりさせてくれる働きがあります。

この緑色が精神に及ぼす効果を私たちは生活のなかでインテリアやファッションにもとり入れています。

かつて病医院では白衣を着ている人が多かったのですが、緑の安らぎ効果を考慮し、薄緑のユニフォームを着用するところも増えてきました。

森林浴の効果効用は香りや大気中に放出される成分(フィトンチッド)だけでなく、樹木の緑という色が私たちに与える作用も見逃せません。

緑色は人間の平衡感覚にもよい効果をもたらすともいわれています。

転地効果

森林浴は近隣の森で行っても効果はありますが、ときには遠くに出かけることで、より効果が上がるといわれています。

一つには日常生活から離れることで、仕事や人間関係のストレスから解放されて気分転換を図れる効果があげられます。
もう一つは住んでいるところと違う気象環境のなかにいることで、日常とは異なる生理的な刺激を受けられるという点です。

気象環境の変化は、からだのもっている気候への適応機能に働きかけます。
急激な変化や、予測のつかない突発的な変化に出合うと気候への適応機能が追いつかなくなって、からだは不調を起こします。

適度であれば適応機能は刺激され活発化され、機能そのものもレベルアップするといわれています。

人間は外界から受ける刺激を視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の神経終末で受けとめ、中枢で分析判断して内臓や骨格・筋肉などの末梢器官に伝えて、刺激に見合った反応を起こし、環境に順応します。

この神経系のネットワークは、病気のときや疲れているときには、うまく機能しないことが知られています。
当然、からだの不調を招く原因となります。

意図的に通常の生活環境と違う気象環境へ行くことは、神経系のネットワーク機能に刺激を与え、適度の刺激であればからだ全体の代謝は旺盛になり、疲れや不定愁訴が回復することはよくあります。
転地療法は、こうした目的で、昔は盛んに行われていました。
平地の森林でもこの効果は期待できますが、日本の森林の多くは山岳地帯にあり、出かけていけば気温や気圧の変化による大きな刺激を受けることになります。

オアシス効果

都市ではアスファルトやビルが日射を吸収し、地表の輻射熱(ふくしゃねつ)は土の地面よりも高くなります。

これをヒートアイランド現象とよんでいます。
そのため大気との温度差で強いビル風が吹くこともあります。

都市部では夏の夜になっても気温はなかなか下がりません。
一方、森林は日射の80~90%を吸収し、夜間には穏やかにその熱を放出するため、日中と夜の体感温度は厳しくありません。

森林の厳しい気象をやわらげる作用をオアシス効果といいます。

空気浄化効果

都市の大気は工場の煙突からの排気物や自動車などからの排ガスで汚染されています。

排ガスの化学物質は日光と反応して光化学オキシダントになります。
いわゆる光化学スモッグの原因の一つではないかといわれています。

森林の樹木は主に葉の光合成で二酸化炭素を吸収し、酸素を放出しています。
森の大気が清浄なのは、この作用によるものです。

大気浄化作用は森に30mほど入った付近から急激に大きくなるといわれています。

防音効果

森に深くわけ入ると、静寂も深まっていきます。
木々の葉のこすれ合う音、風のとおる音も聞こえます。

葉の音や風の抜ける音はリズミカルで、都市の騒音と違って、私たちを疲れさせることはありません。

幅30m以上の森林の中では、外界の騒音が8分の1まで軽減されているという報告があります。

イオン効果

清浄な空気に含まれるイオンのバランスは、ほどよく保たれています。
このバランスは、寒冷前線や低気圧が通過したときに一時的にプラスイオンが増加して崩れ、人体にも影響するといわれています。

このバランスの崩れが神経痛やぜんそく、脳卒中などの発生率が高まる要因だとする気象学者もいます。

さらに都会の排ガスもプラスイオンを増加させる要因の一つという説もあります。

人間が健康を維持していくには1立方メートル当たり、400~1,000個のマイナスイオンが存在していなければならないといわれていますが、プラスとマイナスイオンのバランスがほどよくとれた森林の空気はこの条件を十分に満たしていることになります。

森の快適さは、こうしたさまざまな効果の相乗作用によって保たれているといえます。
フィトンチッドもそのなかの大きな要素であることは確かです。

補助療法としての森林浴の効果

森林浴には、次のような疾患に効果があることが知られています。

補助療法としての森林浴の効果

小児ぜんそくの発作を鎮める効果

ぜんそくの原因は、主として自律神経機能の失調および副腎皮質ホルモンの分泌失調にあり、さらにダ二や排ガス、花粉、食品などのアレルギー因子が複雑にからみあって誘発されるといわれています。

住宅の冷暖房が普及したうえにサッシなどで密閉率がよくなった結果、小児ぜんそくは増えています。

都市部では排ガスにより大気の汚染が進んでいることもあり、症状はなかなか改善されません。

いまのところ決定的な治療法はなく、子どもの場合は薬剤の副作用が成長に影響するおそれもあるので、使用に当たってはなおさら慎重を要します。

青森地方のヒバの例のように、一部のフィトンチッドにはぜんそくの発作を鎮める効果があるとされています。
森林のストレス緩和作用もぜんそく発作を抑えるといわれていますので、森林浴をぜひ試してみましょう。

糖尿病の運動療法として

膵臓(すいぞう)で分泌されるインスリンは血中で糖を代謝してエネルギーに変える働きがあります。
この分泌が不足するか、働きが悪くなるのが糖尿病です。

代謝しきれない糖により全身の動脈硬化が進行し、網膜症、心臓病、神経症、腎臓病などの合併症を発症しやすくなります。

インスリン非依存型の糖尿病の治療は食事療法が中心ですが、運動によるカロリー消費も積極的に行わなければなりません。

糖尿病の運動療法を森林の中で行うと、フィトンチッドの効果などにより、新陳代謝が活発になり有効だといわれています。
森のストレス緩和作用で血糖値の下がることも期待できます。

ノイローゼの症状緩和

日常のストレスから解放されると症状が緩和することがあります。

森林浴による心身のリフレッシュ効果を期待して、森に出かけることを推奨する医師もいます。

胃腸障害の症状緩和

胃・十二指腸潰瘍などの胃腸の疾患はストレスによって起こることが少なくありません。
薬物で治すことは比較的容易になってきましたが、ストレスの原因となるものがあれば再発しやすくなります。

森林浴をしてストレスを発散できれば、胃腸の粘膜修復もスムーズに行われることが期待できるかもしれません。

自律神経失調症が回復できるケースもある

自律神経の失調による病態はさまざまで、病態の現れる器官によって症状は多岐にわたっています。

現代医学でも治りにくい疾患の一つですが、温度や気圧差で末梢神経を刺激すれば失調が回復できるケースもあります。

風邪をひきにくくなる

風邪をひきやすい人は、咽頭や鼻の粘膜のかぜウイルスに対する抵抗力が落ちていると考えられます。
風邪の原因となるウイルスはどこにでも存在しますから、風邪をひかないようにするには抵抗力をつける必要があります。

習慣的に森林浴を行うと、咽頭や鼻の粘膜が鍛えられ自律神経の働きも安定して体温の調節機能も高まり、風邪をひきにくくなることは確かなようです。

こうした疾患は、森林浴だけで改善されるものではありません。
専門医やかかりつけの医師の診察を受けなければならないのはいうまでもありません。

医師の同意や勧めがあれば、森林浴を行い、治療の効果を高めたいものです。

森の木の薬効成分と効果を高める補助療法としての森林浴

森の木の薬効成分と、治療の効果を高める補助療法としての森林浴

森の木の薬効成分(樹木名・含まれている成分・や栗作用)の薬効成分表。 また森林浴だけで改善されるものではありませんが、森林浴には、次のような疾患に効果があることが知られています。

森の木の薬効成分

樹木名

含まれている成分

薬理作用

ブナ

乾留するとタール消毒

クリ

タンニンほか血管収縮作用、かゆみ止め、ただれ防止

コナラ、ミズナラ

タンニンほか血管収縮作用、かゆみ止め、ただれ防止

スギ、コウヤマキ

クリフト・ピマリック酸、アルファピネン、カジネン松やにの代用の杉やに

ヒノキ

ヒノキオール、アルファピネン、ボルネオール、ボルニルアセテート、カジネン、フェノール、リモネンほか尿路消毒、淋病治療、消炎、鎮静、鎮咳

ヒバ(アスナロ)

サディネン、サディノール、ジペンテン、ボルネオール、サビニルアセテート、ボルニルアセテートほか蚊よけ、さびを防ぐ、消炎、鎮静、鎮咳

ネズコ(クロベ)

アルファピネン、カンフェン、ボルネオール、ボルニルアセテートほか消炎、鎮静、鎮咳

温州ミカン

リモネン、ヘスペリジン、クエン酸ほか赤痢菌を殺す、健胃

ソテツ

配糖体サイカジン(実)月経不順、強壮、血管収縮