ライフサイクルの各段階に発症しやすい心の病気

ライフサイクルの各段階に発症しやすい心の病気

 

 

ライフサイクルの各段階での心の成長と発症しやすい心の病には、次のようなものがあります。

 

乳児期(0~3歳まで)

 

乳児期には、人間はまだ単独で生存することができません。

 

そこで、養育者、特に母親との関係が重要となります。

 

 

乳児は、母親に対してさまざまな信号を送り、母親はその信号をキャッチしながら育児を行います。

 

例えば、赤ちゃんは空腹になれば泣き声をあげ、母親が授乳することによって、その欲求を満たします。

 

 

また、母親の姿を見失うと、泣いたり、探したりしますが、戻ってくればたちまち機嫌がよくなります。

 

母親が笑えば、子どももうれしくなり、逆に母親の不安は子どもの不安ともなります。

 

 

母親の存在と愛情は、直接生命の維持にもかかわるため、母親の精神状態を乳児はストレートに受け止めるのです。

 

 

この時期に子どもの健全な成長を支える適切な養育環境に触れられず、母親の愛が剥奪されたり、良好な母子関係が保てないと、子どもは基本的な信頼感を確立することができません。

 

児童期以降、特に思春期、青年期の人格形成において障害を引き起こす素因になることがあります。

 


 

幼児期(3歳から就学まで)

 

幼児期の子どもは、運動能力や言語能力など多くの面で著しい成長がみられます。

 

遊びなどを介して、家庭以外の人間とのかかわりに興味をもち、社会性も発達します。

 

 

たいていは、3歳ごろに第一次反抗期を迎えます。

 

また、男の子は母親に、女の子は父親にそれぞれ異性としての愛情を抱き、同性の親に対しては敵意や憎しみを抱くようになります。

 

 

そして、愛情を独占しようとする願望を克服することによって、良心が芽生え、男の子らしさ、女の子らしさといった性役割を身につけます。

 

 

この時期、親が体罰を与えるなど厳しく接したり、強制力が強すぎると、羞恥心や罪悪感が強くなり、極端に臆病になるといった症状が現れることがあります。

 

また、自分自身に対する嫌悪感を増長させた結果、成長してから正常な性欲が妨げられるケースがみられます。

 


 

児童期(前期:小学1~3年・後期:小学4~6年)

 

児童期前期に、子どもは小学校に入学し、仲間関係を中心とした世界に身をおくようになります。

 

集団生活や学習の過程で、自分には何ができて、何ができないかを徐々に自覚するようになるのです。

 

 

できたことに対して周囲が認めてくれると自信をつけます。

 

そしてさまざまなことに積極的、意欲的に取り組み、困難を乗り越えるすべを手に入れます。

 

 

しかし一方では、できないことに対する劣等感をもったり、自尊心を傷つけられるケースもみられます。

 

このような葛藤を抱えると、友人に暴力を振るったり、小動物を虐待する行為障害が現れたり、不登校に陥る危険性があります。

 

 

また、自尊心と劣等感の折り合いをつけようとする柔軟性がこの時期に身につかないと、思春期に遭遇するさまざまな混乱に適応できなくなる可能性が高まります。

 

児童期後期には、からだの成長も著しく、男女ともに身長が伸び、体重、胸囲などが増え、体力や運動能力も発達します。

 

 

また、中枢神経系も発達し、知覚、認知、記憶、思考などの能力も高まります。

 

さまざまな知識や経験がとり込まれることによって、自分が自分自身を動かしているという自己コントロール意識が生まれます。

 

 

自己への信頼感を基礎に、より複雑で広範囲の人間関係を結ぶ一方、親と距離をおくようになります。

 

 

この段階では、情緒不安定や不安発作、からだには何の異常もないのに繰り返し身体症状を訴える身体表現性障害、自分の性を受け入れられずに反対の性になりたいという欲求をもつ性同一性障害強迫性障害、以前はヒステリーとよばれていたケースなどを含む解離性障害といった症状のほか、拒食症・過食症のような摂食障害睡眠障害などが現れます。

 

 

不登校引きこもり非行といった問題行動もしばしばみられます。

 


 

思春期(前期:中学生・後期:高校生)

 

思春期前期は、二次性徴によるからだの生理的変化が現れる時期です。

 

また、親離れや新しい自我の確立がなされる時期であり、同世代、同性の友人との親密なかかわりが中心的な課題となります。

 

 

他者との関係のなかで、自分がどうみえるのかを意識し、ときには他人のささいな言葉に傷ついて劣等感をもつなど、非常にもろくて不安定な時期といえます。

 

 

この時期には、不登校やいじめ、家庭内暴力、非行、万引きなどが現れたり、摂食障害、心身症、社会恐怖を含む恐怖症、強迫性障害などを発症する可能性が強まります。

 

特に、他人の目を強く意識するこの時期は、社会恐怖が多くみられます。

 

 

思春期後期は、思春期前期から始まった親からの分離が進み、友人関係の深まりや、異性との親密なかかわりへと向かいます。

 

また、性を意識することによって、女性、男性としての自己の確立がなされる時期でもあります。

 

 

親からの精神的分離が円滑に行われないと、境界性人格障害が現れるケースがみられます。

 

なかには性同一性障害や、女子の場合は、からだの成熟そのものを拒否して、摂食障害の一つである神経性無食欲症に陥ることもあります。

 


 

青年期(前期:18~20歳・後期:20~24歳)

 

青年期は、身体的には成熟しているものの、心はまだ中途半端で不安定です。

 

この段階では、暴力、反抗、自己破壊、気分の変動などがよくみられ、青年期そのものを一過性の危機の時期ととらえることができます。

 

 

また、青年期には、多くの人がアイデンティティー(自己同一性)の危機に直面します。それまでの発達段階で未成熟な部分が、この時期に顕在化することが多く、さまざまな適応障害や精神疾患が現れやすくなります。

 

具体的には、アパシー・シンドローム(無気力症候群)のほか、統合失調症対人恐怖、などがあげられます。

 


 

成人期(25~45歳ごろ)

 

青年期までにアイデンティティーをきちんと確立できた人は、他者との間に、友情や愛情などの形でより親密な関係を求めるようになります。

 

成人期における親密な関係というのは、それぞれのアイデンティティーを認め合うことです。

 

 

そのために、ときには自己を犠牲にしたり妥協を要求される側面もみられます。

 

就職や結婚といった大きなライフイベントがあり、ライフスタイルの確立が求められます。

 

 

アイデンティティーがきちんと確立されていないと、人とかかわりをもつことに不安を感じて、孤立したり、うわべだけの人間関係しか維持できなくなる危険性があります。

 

その結果、青年期の無気力状態と同様、アパシー・シンドロームが現れることがあります。

 

また、気分が沈み、何をするのも億劫になったり、不安や焦燥感を抱く抑うつもみられます。

 

 

家庭においては、対立や葛藤ときちんと向かい合い、解決していくことによって安定した夫婦関係が築かれていきます。

 

これを回避してしまうと、良好な関係が保たれなくなって離婚に至る場合もあります。

 

 

また、女性にとっては妊娠、出産などによってホルモンのバランスが崩れやすく、心身ともに大きな負担がかかる時期です。

 

夫婦関係の問題、離婚、出産といった出来事に起因して、対人恐怖、抑うつなどを招くこともあります。

 

夫婦関係や母親の精神状態は、当然、子どもの成長にも影響を及ぼします。

 


 

中年期(40~60歳ごろ)

 

中年期は、身体的な衰えを感じ始める時期です。

 

社会的にも家庭生活においても、最も活動的である一方で、ゴールがみえ始める時期でもあるのです。

 

 

家庭や職場における役割や立場の変化のなかで、もう一度アイデンティティーを見直すことになります。

 

生活習慣病(成人病)を発症しやすくなるのもこの時期です。

 

若い自己イメージを失い、さまざまな面で限界を感じさせられるようになることもあって、抑うつ状態に陥ったり、うつ病にかかりやすい時期とされています。

 

女性は閉経を迎え、更年期とも相まって、身体的な不調とともに、イライラ、不安、興奮、うつ症状などが現れやすくなります。

 

 

また、アルコール依存症のほか、仕事に打ち込んできた人にはテクノストレス燃え尽き症候群、主婦には空の巣症候群などもよくみられます。

 


 

老年期(60~65歳以降)

 

老年期において、身体機能の衰えは避けることができません。

 

足腰は弱くなり、感覚機能に支障をきたしたり、さまざまな病気にもかかりやすくなります。

 

 

50~65歳の初老期では、親の死や子どもの独立、定年退職などのライフイベントがあり、新たなライフスタイルへの適応が求められます。

 

 

自分の死も、身近なものとして感じられるようになります。老年期は、孤独や不安と向き合い、最終的には自分の人生を受容する時期といえるでしょう。

 

ただし、それ以前の発達課題をどのように達成してきたかによって、個人差が大きい時期でもあるのです。

 

自分の人生を肯定できなかったり、受け入れられない場合は、自分を責めたり、逆に他人を非難するという形で表面化することがあります。

 

中年期まではコントロールされていた感情も、老年期には抑制がきかなくなることが多く、その結果、嫉妬妄想、被害妄想に陥ったり、身体の不調が気になって、病院を転々とする心気症が現れることもあります。

 

死と向き合うということについて

 


 

 

 

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