児童精神科(小児精神科)のかかり方

児童精神科のかかり方

 

子どもの発達段階や家族関係、学校の環境などを考慮しながら多角的に診断・治療します。今後のよりよい成長が治療の目的です。

 


 

 

対象は新生児期から思春期まで

 

児童というと、狭い意味では小学校の学童のことを指しますが、児童精神科というときの児童は、赤ちゃんから思春期くらいまでの一般的に子どもとよばれる年代(15歳以下)を意味しています。

 

 

子どもの成長過程は、

  • ①母親の体内から出て、外部の環境に順応していく時期である新生児期(生後10日間)
  • ②急速に成長、発達する時期である乳児期(新生児期以後約1年間)
  • ③特に知的な発達が著しい幼児期(生後1年から小学校入学前)
  • ④心身ともに充実してくる学童期(6歳から11歳11か月)
  • ⑤特に身体的変化が目立ち、精神的にも独立してくる思春期(男子14~16歳、女子12~15歳)

に分けられます。

 

これらの節目節目で、子どもはそれぞれ学校などの新しい環境と、発達に伴って新たに感じる自分自身の心境の変化を経験し、こうした体験のもとで、世界を広げていきます。

 

また、子ども時代は両親、特に母親の存在が大きく、母親なしでは生きられず、母親と分離されただけで抑うつ状態となってしまう乳児期から、ときには母親を拒絶することもある思春期まで、母と子の関係は大きく変化していきます。

 

 

大人との違い

 

子どもと大人の最大の違いは、子どもは発達段階にある点です。

 

独自の価値観や判断能力が確立されていないので、家族との関係や育つ環境の影響を受けやすく、比較的簡単に精神の変調を引き起こします。

 

 

また、子どもは心とからだの分化が完全ではなく、低年齢ほどその結びつきが強くなっています。そのため、大人のように、心の病気とからだの病気を切り離してとらえることができない例がほとんどで、各科の医師と児童精神科医が連携して治療にあたる例も少なくありません。

 

 

子どもが訴える症状は、心の病気でもからだの病気でも、同じ表現である場合が少なくないので、医師はふだんの生活や子どもの表情、態度などさまざまな角度から子どもを観察し、診断を下します。

 

 

児童精神科で扱う主な精神疾患や行動

 

精神発達遅滞

胎児期、あるいは出生後に何らかの原因により知的発達が障害を受け、知的機能が同年代の平均よりも明らかに低く、行動の仕方にも障害がみられます。

 

広汎性発達障害

言語その他のコミュニケーション機能と、対人相互関係の発達レベルが年齢より大きく遅れているか非常に偏っていて、行動や興味の限局化、決まったしぐさなどの繰り返しがみられるもので、家庭や学校での生活に支障が出ます。自閉症も広汎性発達障害の一つです。

 

学習障害

知的障害がないにもかかわらず、知能指数の割に言葉を聞く、言うなどの能力、読み書き、算数の計算や推理といった学力の到達度が極端に低い状態で、発達障害の一つです。遊びのルールが覚えられないなどによって発見されます。

 

注意欠陥多動性障害

注意力や落ち着きが極端に欠けていて、常に活動しており、整理整頓ができないなど衝動的な行動もみられます。

 

てんかん

突然意識を失い、けいれんや呼吸の停止などを伴う大発作、意識はあるものの突然動作が止まり、放心状態となる小発作を主症状とする脳の障害です。薬物療法によって発作を予防すれば健康な子どもと同じように生活ができますが、重症の精神障害に伴うものでは、薬を使っても発作を抑えきれないケースもあります。

 

統合失調症

いらだち、不安、恐怖のほか、幻聴、妄想などがみられます。青年期に多く、子どもには少ないとされていましたが、最近は中学生の発病が目立ちます。また、12歳以下での発病も報告されており、大人になってから発病した患者よりも経過が悪いことが指摘されています。子ども時代に発病し、いったん改善したものの大人になって再発する例もあります。原因はいまだに不明な点が多いのですが、ドーパミンなどの脳内物質との関連も指摘されており、生物学的な発達が早まった(早熟)傾向が、統合失調症の低年齢化をもたらしたとも考えられています。

 

気分障害

抑うつ気分をはじめ、活力や興味の低下、睡眠や食欲の障害、うつ病、気分の高揚、過活動、はしゃぎすぎなどがみられる躁病といった感情の疾患です。低年齢では、うつ状態と躁状態を繰り返す双極性障害が多く、そのサイクルが短いのが特徴です。思春期の患者では薬が効かず、治療が困難なケースもあります。躁状態では、実際の体力を超えて活動している場合が多く、学校を休むことも必要になります。

 

不安障害強迫性障害

人間関係や特定の物や場所に恐怖を抱く恐怖症、呼吸困難や不安感などの発作を伴うパニック障害などが不安障害です。親しい人と離れることができない分離不安障害は小さな子どもによくみられます。強迫性障害は、強迫観念にとらわれたり、儀式的な行動を繰り返すもので、無意味とは思いながらもそれをしないと落ち着かなくなります。

 

解離性障害

記憶喪失、とん走(急に行方不明になって放浪生活をする)、運動機能や感覚の麻痺などを含むのが解離性障害です。急に別の人物に変わり、本人もそれに気づかず、元に戻ったときには別の人物になったことをまったく覚えていないような二つ以上の人格をもつ解離性同一性障害(多重人格)もあります。多重人格が問題化するのは青年期以降が多いのですが、発症のほとんどが思春期以前だといわれています。多くの場合、幼児期に虐待やいじめを受けたり、精神的にひどく傷つけられた経験をもっています。

 

身体表現性障害

身体的な異常はないのに、さまざまな身体症状を訴えるもので、精神的な不安や葛藤を身体症状に置き換えているとされます。青年期に多いとされますが、自律神経の障害、持続性の痛みなどは学童期、思春期にもみられます。

 

ストレス障害、適応障害

親しい人の死、自然災害、暴行などで受けた精神的ショックによって急性の精神症状を現すストレス障害は、3日くらいで軽減する急性のタイプと、ショックからしばらくして発症し、症状が持続する(心的)外傷後ストレス障害があります。適応障害は身の回りの変化に対応しきれずに起こるものです。

 

摂食障害

神経性無食欲症(拒食症)と、神経性大食症(過食症)が含まれます。最近は発症年齢が下がってきており、小学生にもみられます。子どもでは月経を避けたい、体重が減るのがうれしいといった発想で食事制限しているケースも多く、早く治療をすれば、比較的経過はよいといわれています。

 

睡眠障害

心配事があって眠れなくなる不眠、眠っているときにパニック状態になる夜驚症、睡眠中に無意識に歩きまわる夢中遊行症、不安や緊張が引き起こす悪夢などが含まれます。いきなり眠気がおそったり、何日も眠り続ける過眠症は思春期に多いといわれています。過眠症の一種であるナルコレプシーは、日中の居眠り、動揺したときなどに筋肉の力が抜ける脱力発作が主症状で、半数以上が15歳以下の発症とされています。

 

境界性人格障害

人格障害は、他人とのかかわり方や行動パターンが、平均的な人間と比べて際立っていたり固定されていて柔軟性がないために、人間関係などに問題が生じ、適応性に欠けるものです。子どもで問題になる人格障害は、境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)です。幼児期から青年期に現れて、発達の過程で定着していくものとされます。

 

不登校

心理的な理由で学校に行くのが困難となる状態です。一過性のものから、外出恐怖など深刻な状態に移行するケースまでさまざまで、背後に精神疾患がみられる場合もあります。その後の人生に少なからず影響すると考えられ、早い段階で改善することが望ましいとされています。

 

児童虐待

親が自分の子どもに暴力を振るうなど虐待を繰り返すもので。虐待を受けた子どもは、情緒不安定や人格障害などに陥ったりするほか、将来親になったときに自分の子どもに同じ虐待を繰り返すケースもみられるといわれています。

 

その他

運動や発声の障害が起こるチック、自分の髪の毛を抜くことで不安を解消しているといわれる抜毛症、食べ物ではないものを食べてしまう異食、年齢的にトイレトレーニングがすんでいる子どもが失禁したり、トイレ以外で排便してしまう遺尿や遺便も精神的ストレスと関連しています。また、反社会的行動を繰り返す行為障害、非行のほか、薬物依存なども低年齢化が目立っています。

 

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子どもの心の病気の診断と治療

 

児童精神科での診断や治療は、発達障害があるかないかによって二つに分かれます。

 

発達障害とは、自閉症などの広汎性発達障害と、学習障害といわれるものを含む特異的発達障害のことで、脳に何らかの機能異常があり、そのために心理的機能の一部ないしかなり広い範囲の発達に障害が現れるものをいいます。

 

知的障害といわれる精神発達遅滞もこれに含めることがあります。

 

発達障害がない場合には、個々の状態を正確に把握して、それぞれに合った治療を進めていきます。

 

まず、詳しい問診や保護者や教育関係者からの聞き取り調査、からだの病気の有無の確認をし、医学的検査を行います。面接では家族構成や生活様式、習慣、問題行動の経過、性格、学業成績などを細かく開きます。

 

 

発達障害の場合には、言語の発達や心理的発達について詳しく聞きだすことで見当がつきます。ときには母子手帳や育児日記、映像や写真などの記録が貴重なヒントとなることもあります。

 

 

子ども自身に対する面接は、慎重に行われます。子どもの心を傷つけたり、心を閉ざしてしまうことがないよう、タイミングを図ったり、子どもがうまく表現できない症状をやさしい言葉に置き換えたりして、治療する医師が子どもを援助する形をとることが多いようです。

 

 

児童精神科でよく用いられる療法にプレイセラピー(遊戯療法)があります。

 

子どもにおもちゃを与えて自由に遊ばせて心の苦しみを把握したり、絵を描く、ストーリーをつくる、楽器を演奏するといった遊びを通して、言葉にならない内面を表現させようというものです。

 

 

砂を敷きつめた箱にミニチュアの人や植物、動物、建物、乗り物などを並べて遊ぶ箱庭療法、集団でダンスをすることで他人との共感を得たり、心身をリラックスさせるダンスセラピーなども、プレイセラピーの一種です。

 

発達障害の場合には、プレイセラピーで治すことはできませんが、大人が正しい遊び方、振るまいを具体的に教えるために利用するケースもあります。

 

 

疾患によっては薬物療法が効果的です。

 

大人同様、うつ病には抗うつ薬、統合失調症には抗精神病薬が用いられます。てんかんには抗てんかん薬、不安障害には抗不安薬というように、それぞれによく効く薬が開発されています。

 

関連抗うつ薬

 

子どもの場合、心の病気が原因で、学業に重大な遅れが出ることがないように、薬物療法で症状を抑え、なるべく通常どおり学校に通えるよう配慮する必要があります。

 

 

発達障害の場合には、本人から内面の葛藤や不安を引き出していくような治療は行いません。

 

発達障害といっても障害を起こしているのは、発達の一部だということを念頭におき、それを障害のない機能でカバーしていくという発想が大切です。そのうえで、障害をもちつつも成長していけるよう支援するのが児童精神科の役割となります。

 

 

親の治療が必要なことも

 

子どもの発育、特に情緒の発達や精神の安定には親とのかかわりが大きく影響します。

 

とりわけ母親の存在は大きく、惜しみない愛情を注いだり、自主性を重んじたりと、時と場合によって適切なかかわり方をすることが子どもの健全な発育を促すといわれています。

 

育児中の母親は、しばしば子どもへの関心が高まりすぎたり、不安が強くなったりします。

 

そうした母親の精神状態が子どもに影響していると考えられるケースも少なくなく、子どもよりもまず母親の治療が優先されることもあります。母親の回復に伴って、子どもの症状が消えてしまうケースもあります。

 

発達障害の場合には、障害をもった子どもを育てる苦労を側面から援助したり、適切な対応を助言したりします。

 

子どもの心は、親の影響を大きく受けて発達していきます。常に子どもの内面を見つめ、柔軟な態度で接するようにしましょう。

 

 

日本にはまだ多くない子ども専用の精神科

 

児童精神科とは、文字どおり子どもの心の問題を扱う診療科です。児童精神科という名称のほかに小児精神科という名称もあります。児童精神科の必要性が指摘されるようになったのは比較的最近のことです。

 

従来は精神科の病気はもっぱら大人特有のものとされ、子どもでは、ほとんど問題にされませんでした。ところが、教育環境の変化に伴って新たな問題が浮上し、それにどう対応すべきかが、教育関係者、医学関係者の重大なテーマとなり、児童精神医学という独立した学問が生まれてきたのです。

 

 

研究が進むにつれ、子どもたちの心の問題を解決するためには、子ども特有の心理、家族関係、発育環境などに関する研究が必要になってきました。特に親子の関係が大きく影響を及ぼすことがわかり、家族、特に母親との関係を考慮した治療が行われるようになりました。

 

 

さらに、大人の精神疾患の構造が多様化してきたのと同様に、精神科の治療が必要となる子どもの人数と、病気の種類はますます増えてきています。

 

こうして学問としてだけでなく、心の病気を抱えた子どもを診る専門の科として、児童精神科あるいは小児精神科が設置されるようになったのです。

 

 

子どもが精神の問題をかかえているようなら、なるべく早く公的機関の窓口などで、専門医を紹介してもらいましょう。

 

児童精神科のほかに、保健センターなどもあります。

 

精神科では、まず、現在の症状と今後どのような状態に発展するか、さらに薬の効果や目的について説明がなされ、保護者に薬を飲ませるかどうかの同意が求められます。

 

その際には、副作用の説明もよく聞き、ときには本人を退席させ、さらに詳しく説明してもらい、病名も聞いておきましょう。そうすれば、ほかの医師にかかるときにも、正確な情報を伝えることができます。

 

子どもの精神疾患を回復させるためには、親の努力が不可欠です。子どもが生活しやすいよう学校に働きかけたり、家庭生活をゆとりあるものにし、そして何よりも、必ず回復すると信じ、医師との相談を密にして、焦らずに子どもとともに治療に取り組みましょう。

 

問題行動や気になる癖が、発達の過程の一つなのか心の病気なのか親が判断できますか?

症状だけから病気かそうでないかを判断するのは大変難しいことです。

 

子どもは発達の過程にありますから、家族との関係、発育の環境などの影響を受けやすく、はたから見れば少しおかしい行動でも、発育の条件によっては当然の成り行きである場合もあります。

 

子どもの場合には、大人以上にさまざまな情報を集めて検討し、診断することが必要なのはこのためです。

 

ただ、同じ年代の平均的な子どもと比較して著しく発達が遅れていたり、他人とのコミュニケーションに障害がある場合や、ある症状によって友だちとの人間関係や学校生活、日常生活に支障をきたしているような場合には心の病気をはじめ、何らかの問題をかかえていると疑ってみることも必要です。

 

例えば、3歳の子どもがおねしょをしても気にすることはありませんが、10歳だったら問題になります。大人は、子どもの発達段階を客観的にとらえておくことが必要です。そして、精神面や行動面に急激な変化がみられたり、気になることがあったら、早めに児童精神科医などに相談しましょう。

 

 

 

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