主な精神療法(心理療法) さまざまな種類の精神療法

主な精神療法(心理療法) さまざまな種類の精神療法

主な精神療法(心理療法) さまざまな種類の精神療法

主な精神療法(心理療法) さまざまな種類の精神療法

 

 

現在行われている精神療法には、さまざまな種類があります。

 

主な精神療法の基本となる考え方や手法の特徴、治療対象として適していると考えられる疾患は次のようなものです。

 

 

精神分析・精神分析的精神療法

 

精神分析は、およそ100年前に著名な精神科医であるフロイトによって創始された精神療法で、さまざまな精神療法の出発点となったと考えられています。

 

精神分析の特徴は、問題となっている心理的状態につながっていると考えられる、患者自身も意識していない深層心理を浮き上がらせることにあります。

 

深層心理を理解し、長い間解決されなかった心の問題をきちんと解釈すると、悩みが本人のなかで消化され、精神的な症状がなくなる、あるいは軽減されると考えられています。

 

 

精神分析では、1回40~50分の面接を週に4~5回の割合で行いますが、これには長い時間と多額の治療費がかかります。

 

そこで、面接の頻度を減らした形で行われるようになってきました。精神分析療法の理論と技術を応用し、30~50分の面接を週に1回程度行う療法を精神分析的精神療法とよんでいます。

 

 

解決されないまま心の奥にしまい込まれた古い傷を掘り起こす作業は、場合によっては患者をさらに苦しめる結果につながります。

 

そのため、治療者にはより豊かな感受性、情緒の安定性、患者を思う気持ち、専門的知識や能力が求められます。

 

また、治療者と患者の信頼関係が強固でなければなりません。

 

精神分析、精神分析的精神療法は、子どものころのつらい体験など抑圧された記憶が根底にあって起こる、人間関係の問題に適しているといわれます。

 


 

認知行動療法

 

1950年代にアメリカで生まれた精神療法で、人間の行動は、その善し悪しにかかわらず、すべて繰り返し学習することによって身につく習慣であるという考え方が基本となっています。

 

認知行動療法では、修正すべき問題行動を見極め、その原因や背景にあるものは何か、その行動を修正するためには、新たにどのような学習をすべきかを分析し、具体的な治療プログラムを立てて治療を進めます。

 

 

望ましい行動ができたらほうびを与え、反対に望ましくない行動には罰を与えることで、望ましい行動を身につけていくオペラント法は、自閉症、知的障害、抜毛などの習癖異常の子どもや、非行少年・少女などの治療に有効とされる認知行動療法です。

 

 

また、恐怖症といった不安障害の治療によく用いられる系統的脱感作療法は、不安や恐怖の対象となっている物や事柄に少しずつ直面させ、そうした現実に近寄っても発作が起こらない体験を重ねることで、不安や恐怖をとり除いていく手法です。

 

 

問題行動を患者自身が分析し、それを直すための目標設定、修正計画などを立てて実践するセルフコントロール法も認知行動療法の一種です。

 

 

認知行動療法は、依存症摂食障害、性嗜好の異常の治療などにも応用されています。

 

治療の目標が行動の修正にあるので、必ずしも行動が問題にならない(心的)外傷後ストレス障害などにはあまり適していないと考えられています。

 


 

自律訓練法

 

自己暗示、自己催眠と共通したメカニズムを利用しているもので、1930年代にドイツで生まれました。

 

心の状態は、からだにさまざまな影響をもたらしますが、自律訓練法ではそうしたからだに変化を与える脳を意識的にコントロールして、心身をリラックスさせる方法を身につけるもので、訓練のためのマニュアルもできています。

 

心理的な原因によって起こったからだの病気である心身症や、不安障害などに効果を発揮します。

 

また、特に精神的な問題を抱えていない人にとっても、ストレス解消などに有効です。

 

一人でもできますが、思いがけず強い作用が出ることもあるので、はじめは医師などの指導を受けるほうがよいとされています。

 

関連自律訓練法

 


 

森田療法

 

1920年代に、日本の精神医学者、森田正馬氏によって創始された精神療法で、独自の神経質理論をもとにして確立されました。

 

森田療法のキーワードは、「あるがまま」とされています。不安や恐怖感などのマイナスの感情も、否定せずにそのまま自分のものとして受け入れ、そうした自分を認めて生活していくことが基本です。

 

 

そのためには、問題となっている心理的状態、それにつながる患者自身の性格や、身についた思考の悪循環を明らかにすることから治療が始まります。

 

創始当時はそれまでの生活との隔絶のため、入院が原則とされましたが、近年は、重症の場合を除き、外来による治療が行われています。また、軽症なら自助グループへの参加だけでも効果が得られます。

 

 

森田療法の自助グループは大きな組織となっており、全国に支部があります。

 

いずれの場合も、心の問題を抱えるに至った自分を見つめ、振り返り、自分自身に対する理解を深めて受け入れていくことが基本です。

 

治療を続けていくうちに、次第に自分の悩みにとらわれずに日常生活を送れる方法が学べます。

 

 

森田療法は、次のような患者に、より効果を発揮するとされています。

 

  • 自分が不安や恐怖で苦しんでいるという自覚があり、そのことによって日常生活が困難になって苦痛を感じている
  • そうした状況から抜け出したいと強く願っている
  • 援助を求めるとともに、自分自身も解決のための努力がしたいと考えている

 

などの条件を満たす患者です。

 

 

その意味で、統合失調症やうつ病、人格障害(パーソナリティ障害)など、多くの精神障害が森田療法の対象から除外されます。

 

森田療法は、個人精神療法としても集団精神療法としても、また、精神疾患の家族をもつ人へのカウンセリングにも応用されます。

 


 

サイコドラマ

 

1910年代にスイスで生まれ、創始者モレノがアメリカに渡って発展させた精神療法で、心理劇と訳されます。

 

サイコドラマの目的は、それまでの自分から解放され、別の人物を演じながら、新しい自分をみつけだすことです。

 

また、頭で考えたり、言葉で表現するだけでなく、全身を使って役を表現し、劇中の人物を体験するなかで、他人とのかかわり方や素直な感情表現を学びます。

 

 

サイコドラマは、複数の患者が同時に治療に加わる集団精神療法です。

 

集団のなかで、ときには主役となり、ときには脇役となります。さまざまな役割を体験しながら、患者は客観的に自己観察をしていきます。

 

 

サイコドラマには、特定の場面を即興で演じて対応の仕方を身につけるロールプレイング、社会問題などを題材に演劇をするソシオドラマ、患者の訴えを治療スタッフが演じて見せるプレイバックシアターとよばれる手法などがあります。

 

サイコドラマはあらゆる精神障害の患者に応用できるとされ、特に言語による表現が苦手な患者には有効といわれています。

 


 

プレイセラピー

 

言語による表現が未発達な子どもを対象とした精神療法です。

 

フロイトの精神分析学を学んだ学者たちによって1930年代から行われ、日本に紹介されたのは70年ほど前で、日本でもかなり定着してきており、多くの治療者がプレイセラピーを実践しています。

 

 

プレイセラピーは、当初は言葉で表現されない子どもの訴えを、遊んでいるときの言動から分析しようとするものでしたが、今では内面の表現としてみるだけでなく、情緒の発達や愛情の確認などを体験させ、子どもの成長を促すという積極的な意味でも用いられるようになっています。

 

 

プレイセラピーでは、治療を受ける子どもと治療者のコミュニケーションが重視されます。

 

一定期間、子どもと治療者が一緒に遊び、治療者は子どもの感情を受け止め、心理的問題を見極めながら、心の成長を促していきます。

 

治療の効果は、子どもがそれまでできなかった遊びにチャレンジしたり、自分なりの問題解決法を模索し始めたりすることで表れてきます。

 

 

プレイセラピーの対象は、主に学童期以下の情緒障害の子どもです。

 

遊びの種類はいろいろで、ボールや人形、積み木などを使う場合もあれば、好きな画材で絵を描いたり、粘土で物をつくったりすることもあります。

 

治療者と子どもが1対1で行う場合を個人プレイセラピー、複数の子どもが一緒に行うケースを集団プレイセラピーといいます。

 


 

芸術療法

 

絵画や粘土細工などの創作は、大人の精神療法としてもしばしば用いられ、まとめて芸術療法とよばれます。

 

絵画のほかにも彫刻、陶芸、染色などさまざまな創作活動が含まれます。

 

また、楽器の演奏やダンスといった音響芸術、詩や小説をつくる言語芸術など、芸術療法に用いられる創作活動は大変幅広くなっています。

 

このなかから、患者に合ったもの、治療上有効なものが使われます。

 

 

芸術療法では作品としての質は問題になりません。絵や音楽が得意な患者のほうが治療効果が高いわけでもありません。

 

芸術療法で大切なのは、患者が自分の内面を表現することです。

 

 

作品は、治療者にとっても患者にとっても、患者の心の状態を把握するヒントになりますが、作品自体が意味するものをどう解釈するかは大変難しい問題です。

 

したがって、作品の解釈よりも、患者が創作するという行為を通して自分自身を理解したり、自尊心の高まりや心の満足を得るといった体験のほうを重視します。

 

 

また、創作に打ち込むエネルギーが、生きるエネルギーにつながることも芸術療法の効果の一つです。

 

子どもの問題行動、高齢者の認知症、不安障害や気分障害といったさまざまな精神疾患の治療に用いられます。

 

 


 

箱庭療法

 

ある大きさに限定された箱庭に、ミニチュアの家具や人形、動植物などを配置して、自由な世界をつくり上げていく手法です。

 

もともとは、イギリスの精神科医が子どもの心理分析を目的として、治療のためのプレイルームに箱庭を置いたのが始まりといわれ、次第に大人にも用いられるようになりました。

 

日本に紹介されたのは1965年ですが、急速に治療現場に浸透し、広く行われています。

 

 

芸術療法と同様、でき上がったものの解釈は難しく、それよりも、さまざまな物を配置していくプロセスで自分の内面に気づいていくことのほうが重要とされます。

 

 

箱庭療法は、幼児から高齢者まで、さまざまな患者の精神療法として用いることができます。

 

ただ、患者が神経過敏になって、ミニチュアの色や形にこだわってしまったり、ミニチュアを配置しなければならないという意識が大きな負担になってしまうようなケースでは、この療法は避けなければなりません。

 


 

催眠療法

 

催眠状態という特殊な意識状態をつくり、その状態を利用して不安や恐怖感の軽減を図ったり、無意識の心理に近づき、心の問題を明らかにしたりする精神療法の総称です。

 

人は睡眠状態に入ると、不安や痛みに対する感覚が低下するとともに、知的な精神活動も低下し、外部からの情報などに乱されることのない、より澄んだ心の状態になると考えられています。

 

現実に対応するために無意識に精神を緊張させている状態から解放され、心が自由になった状態ともいえます。

 

 

催眠から覚めたときにまったく催眠中の記憶がないのは、非常に深い催眠状態をつくった場合であり、浅い催眠状態では、周囲の状況を把握し、記憶しています。

 

ただ、ある程度、心の抑圧がとれて自由になっているので、治療者の話を素直に聞いたり、より自由な発想で自分について考えることができます。

 

 

催眠療法は、数ある精神療法のなかでも、誤解されることの多い療法だといわれています。

 

例えば、治療者が患者の意識を失わせ、違う考えを植えつけたり、心の問題をそっくりとり除いたりできると考えるのはまったくの誤解です。

 

 

催眠療法は、不眠症、不安、対人緊張、恐怖症、強迫性障害あがり症などさまざまな状態の改善に利用されています。

 

個人精神療法と集団精神療法

 

こうした精神療法が、個人に対して行われる場合を個人精神療法、同時に複数の患者に対して行われる場合を集団精神療法とよびます。

 

集団精神療法は、通常、患者集団に1~2人の治療者が加わり、悩みを打ち明け合ったり、それについて意見を出し合ったりして進められます。

 

10人以下で行う場合を小集団精神療法、10人以上、場合によっては50~60人もの集団で行う場合を大集団精神療法とよびます。

 

大集団精神療法には、からだを使って集団で行う活動療法も含まれます。

 

 

活動療法の代表はサイコドラマです。芸術療法や園芸療法なども活動療法とよぶことができますが、これらは個人療法として行われるケースが多いものです。

 


 

家族療法

 

複数を対象に行われる治療のなかで、特に家族単位で行われるものを家族療法とよびます。

 

家族全員、親子、夫婦などで治療に参加します。

 

 

家族療法は、病気の原因が家族や夫婦の関係にあるという考えから一緒に治療しようとするわけではありません。

 

家庭に患者がいることで生じる家族の悩みを少しでも軽減するのが目的の一つです。

 

 

また、精神疾患の治療では家族の協力が大変重要な意味をもつので、治療効果を高めることを目指して家族療法が行われるのです。

 

 

家族療法は、患者と治療者、家族が輪になって、今後について相談し合う場ともいえます。

 

家族が患者への対応で困っていれば治療者がアドバイスし、病気の責任が家族にあるのではないかと気に病んでいる場合には、家族のせいではないことを話し、安心感を与えたりします。

 

 

逆に、治療者が疑問に思っていることや、患者の生活について知りたいことを家族に尋ね、患者への理解を深める場合もあります。

 

家族療法の効果が出始めると、家族の間に一体感や希望が生まれて、家族の雰囲気が変わってきます。

 

 

家族療法は、子どもの不登校非行引きこもり、思春期や青年期の摂食障害強迫性障害人格障害(パーソナリティ障害)、成人の出社拒否アルコール依存、そのほか(心的)外傷後ストレス障害、長年にわたる治療が必要な精神疾患などさまざまなケースで有効です。

 

 

精神的問題は身近な人間関係と関連する場合が多いので、家族単位で問題解決にあたるこの療法は、患者本人だけに対する治療にプラスした効果が出るものと期待されています。

 

ただ、日本では家族療法を行っている施設が少ないこと、保険が適用されないことなどから、家族療法を受けにくい状態にあるといえます。

 

 

また、特に離婚にからむ問題、性の問題など夫婦間の葛藤を解決するために夫婦で治療を受けるケースを、夫婦療法あるいはマリタルセラピーといいます。

 


 

 

 

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