なぜ性欲があるの?(性欲の仕組み)

なぜ性欲があるの?(性欲の仕組み)

なぜ性欲があるの?(性欲の仕組み)

生き物にとって性欲は、自分と同じ固体を次の世代に引き継ごうとする欲求で、食欲と並び、動物の二大本能の一つです。

 

ただ、人間だけは、性欲が単に生殖のための欲求ではなく、性的な愛(快楽)を求める精神的な一面ももっています。

 

 

ほかの動物が本能だけで性行動を行うのに対し、人間の性行動には理性が作用しています。サルからヒトに進化する過程で大脳が著しく発達し、高等な精神活動を受けもつ大脳新皮質の制御を受けるようになったからです。

 

外部からの刺激によって性欲が起こっても、相手や状況次第で性行動が抑制されたり促進されたりするのは大脳新皮質の働きです。

 

 

性欲をつかさどる性中枢としては、視床下部前群にある内側視索前野が知られています。内側視索前野は、性ホルモンを分泌したり、女性の排卵をつかさどるなど重要な役割をする脳です。

 

外側視索前野には、快感神経とよばれるA10神経が通っており、これによってセックスによる快感の伝達、増強が行われます。

 

 

性欲は、性器や性感帯に直接加えられた局所的な触覚の感覚刺激はもちろん、視覚や嗅覚、聴覚などからの感覚情報、記憶や想像などの情報が大脳皮質に性的刺激としてとらえられることで生じます。

 

その刺激が視床下部にある性中枢を刺激し、さらに下腹神経や骨盤神経などを介して生殖器に伝わると、勃起などの身体的興奮が引き起こされます。

 

 

恋人の好みを決める際は、大脳辺緑系の特に扁桃体とその近傍の部位が関係しているといわれています。扁桃体は、快・不快、好き・嫌い、など、いろいろな情動反応の中枢であり、それに関連した動機づけに関係しています。

 

扁桃体が好ましい相手かどうかを判断し、それを行動に移すのが視床下部の役割と考えられています。

 

 

 

脳が支配する性行動(性欲)

 

ラットを使った実験では、次のようなことが分かっています。

 

ラットの典型的な性行動パターンであるマウント(メスが突き出したおしりにオスが乗る)とロードーシス(メスが背中を反る)は、性ホルモンに依存していますが、卵巣を摘出したメスのラットに男性ホルモンを与えても、マウント行動は起こらず、去勢したオスに女性ホルモンを与えてもロードーシスは起きません。

 

 

このことから、生殖行動にみられる性差は、脳の違いによるもので、性腺の分泌する性ホルモンで決まるものではないことがわかります。

 

 

また、オスを生後すぐに去勢し、大人になってから女性ホルモンを投与すると、メスと同様にロードーシスをとるようになります。

 

一方、生まれたてのメスのラットに男性ホルモンを与えると、成熟後マウント行動を示ようになります。

 

 

メス型の脳は卵巣がなくてもできあがるため、脳の基本設計図は雌型で、脳が形成される時期に性ホルモンが作用すると雄型に改造されると考えられます。

 

これは、ヒトでも妊娠90日前後に同じような仕組みで脳の性分化が起こるとみられています。

 

 

交尾しているメスのラットの内側視索前野の神経細胞を調べると、誘惑行動の開始に先だって活動が盛んになる神経細胞があり、メスの性欲を反映していることがわかります。

 

内側視索前野の一部には、メスよりもオスのほうが5倍も大きい性的二型核とよばれる部位があり、この神経核はオスの性的覚醒に関係があると考えられています。

 

 

この領域には、ヒトでも形態学的な性差がみつかっており、女性より男性で細胞数が多い性的二型核の存在が推定されています。

 

男性同性愛者では、この内側視索前野の性的二型核に相当する部分の大きさが女性なみの大きさしかなく、細胞数も異性愛者よりも少ないという研究結果も発表されています。

 

 

また、性交中には、オスでは背内側核が、メスでは腹内側核の活動が活発化するともいわれています。

 

 

 

性欲と肉体的変化【男性は勃起・女性は膣粘液が分泌】する理由

 

私たちのからだは、性的な刺激を受けて性欲が高まると、心臓がドキドキしたり、血圧が高まったり、体温の上昇などがみられます。男性では陰茎が勃起し、女性では膣粘液が分泌されます。

 

これらの肉体的変化は、自律神経のなかの副交感神経の興奮によって、全身の血管が拡張した結果起こります。自律神経は、体内の環境を一定に保つ働きをしておりその中枢は、視床下部にあります。

 

 

自律神経は、意思とは無関係に働く神経なので、こうした肉体的変化を意思の力で抑え込むことはできません。しかし、大脳新皮質の理性によって性欲を抑制することはできます。

 

 

また、人間の性欲には精神活動が大きくかかわっているので、心配事などの精神的なストレスがあると、その信号が性中枢に伝わり、性的な刺激があっても性欲が起こらないことがあります。

 

ストレスの信号がもう一つの自律神経の交感神経を緊張させると、副交感神経の作用とは逆に全身の血管が収縮するので、陰茎は萎縮し、膣粘液は減少するのです。

 

 

内側視索前野は、睡眠や覚醒の中枢でもあり、視床下部後群には体温調節中枢があります。

 

性欲や性行動に伴って、胸の高なりなど、さまざまな身体的変化が起こるのは、性中枢の周辺にこうした神経中枢があるからです。

 

 

 

性欲は快感を求める脳の働き

 

すべての動物は快感を求めて生きているといわれ、これを快感原則といいます。

 

この場合の快感は、本能が満たされる快感、おいしいものを食べる快感、尊敬する人と会話をする快感、安心、満足など、快いと感じることすべてを含みます。

 

性欲もまた、快感を求める脳の働きといえます。

 

人間が快感を得ることができるのは、脳に快感を伝える神経があるからです。この神経は、脳幹の中央に沿って並ぶA、B、Cの神経の系列のうち、10番目の神経であるA10神経です。

 

 

A10神経は、脳内の神経のなかでも、快感を伝える神経伝達物質ドーパミンを多量に分泌しています。

 

脳幹の一部である中脳から出発し、視床下部をかすめるようにして大脳辺縁系に向かいます。そして記憶に重要な働きをする海馬を通り、大脳新皮質の前頭連合野につながります。

 

 

本能の一つである性欲が満たされると、その快感がA10神経を伝わっていきます。性の快感は、大脳辺緑系までは生理的快感として伝わりますが、前頭連合野に伝わったところで、精神的快感へと昇華します。

 

 

A10神経が分泌するドーパミンの量は、特に前頭連合野を通る神経で多く、快感はここで増強されます。愛する人とのセックスによる快感が大きいのは、前頭連合野が特定の相手を意識し、精神的快感を得ているからです。

 

この快感が記憶に残り、特別の人に対する性欲が高まっていくと考えられています。

 

 

愛する相手と結ばれたいと願う性欲は、自分を高め、生きようとする意欲にもつながります。性欲は種の繁殖だけでなく、生きる原動力ともなっているのです。

 

 

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