ビタミンB1の効果|ブドウ糖をエネルギーに変え、神経の働き保つ効果
実は「ビタミンB1」という呼び方はニックネームのようなもので、本当の名前は「チアミン」といいます。
ビタミンB1を含む医薬品は、フルスルチアミン、ベンフォチアミン、ジセチアミン、オクトチアミン、チアミンジスルフィド・・・などと表示されていることがあります。
名前の中に「チアミン」と入っていることでもわかるように、これらはすべて「ビタミンB1」のこと。
いやなにおいを軽減したり、吸収されやすくしたり、さまざまな工夫の末、医薬品として用いられています。
ところで、ビタミンB1は、ワラビやゼンマイに含まれる酵素「アノイリナーゼ」に触れると分解され、効力を失ってしまいます。
一方、ニンニクやネギ、ニラなどに含まれるにおいの成分「アリシン」と一緒になると、「アリチアミン」という物質に変わります。
アリチアミンは、アノイリナーゼで分解されない上に、水に溶けにくく、熱に強く、吸収されやすく、からだの中で利用されやすく…と3拍子も4拍子もそろった万能選手。
ビタミンB1豊富な豚肉とタマネギを炒めたポークジンジャー、豚挽き肉にネギやニンニク、ニラを加えて作る餃子。
いかにも元気が出そうな料理には、元気が出る理由があるようです。
ビタミンB1には、ブドウ糖をエネルギーに変え、神経の働き保つ効果があります。
「痛み止めをのむと痛みがおさまる」というように、効果がわかりやすければいいのですが、滋養強壮薬(ビタミン剤、ドリンク剤を含む)の場合、効いたような気もするし、変わらないような気もするし…。
効果をはっきり実感できないこともあるかもしれません。
十分な睡眠が疲労回復に効果的なのはもちろんですが、ビタミンB1を摂ることで、疲れが残りにくくなった、早く回復するようになったなど、疲れの度合いが少し違ってくることもあるようです。
特に、激しい運動や労働をしたとき、お酒を飲んだとき、甘いものを食べたときには、糖質(炭水化物)の代謝に関係するビタミンB1の補給を。
すぐに疲れる、疲れがとれにくい?現代もあるビタミンB1欠乏症
ビタミンB1は、「エネルギーを生み出すビタミン」。
糖質(炭水化物)の代謝に関与して、活動の源となるエネルギーをつくり出し、筋肉や神経の機能を維持する上で重要な役割を担っています。
そのため、ビタミンB1不足では、すぐに疲れる、疲れがとれにくいということに。
戦前の日本では、脚気が猛威をふるいました。
これもビタミンB1の欠乏によるもの。
足の痛みやむくみ、歩行障害など末梢神経障害から、心機能障害、さらには心不全へと進行し、年間3万人もの人が死亡したとの記録もあります。
原因は当時の食生活にありました。
胚芽を取り除いた白米、漬物やみそ汁程度のわずかな副食。
ビタミンB1はほとんど含まれていません。
しかも、体内には白米による多くの炭水物が入ってきますから、わずかなビタミンB1はその代謝のためにどんどん消費されて枯渇し、欠乏症を引き起こしてしまったのです。
戦後、脚気の人は激減しましたが、近年、「ウェルニッケ脳症」というビタミンB1欠乏症が問題となっています。
これは海外では以前からみられていたもので、発症する人の多くはアルコール依存症でした。
アルコールを代謝する際にも、ビタミンB1が消費されるためです。
日本では、妊婦さんがウェルニッケ脳症を発症したことが報告され、話題となりました。
原因は、つわりがひどくて食事が摂れない人に用いられた高カロリー輸液。
輸液に入っていたのはブドウ糖のみ。
ビタミン剤が加えられていなかったため、ビタミンB1の急激な欠乏が起こってしまったのです。
ウェルニッケ脳症では、眼球運動の麻痺、運動障害、歩行困難など身体的な障害だけでなく、意識障害、記憶障害、幻覚など、精神面の障害もみられます。
高カロリー輸液は、口から食事を摂ることができないときなどに、栄養補給のために用いられることがあります。
この場合も、十分なビタミンB1がないと、糖の代謝が正しく行われず、酸性物質である乳酸が作られるようになります。
その量が多くなると血液は酸性に傾き(アシドーシス)、血圧の低下意識障害、痙攣などを起こすおそれがあります。
糖分を摂るときは、ビタミンB1を。
鉄則です。
もちろん、ありがたいのですが‥」。
被災地での食事というと、どうしても主食が中心になりがち。
となると、ビタミンB1をはじめとするビタミン・ミネラルの不足が心配です。
そんなときにこそ、手軽にバランスよく栄養素を補給できる総合ビタミン剤やマルチビタミン、マルチミネラルを。
不足しているものを補うこと。
サプリメント本来の姿です。
甘いものやペットボトル入り飲料、アルコールなどをよく口にする人、肉体労働が多くエネルギーを人並み以上に消費する人は、潜在的にビタミンB1が不足していることが考えられます。
特にペットボトル入り飲料には、感じる甘さ以上の糖分が含まれていることも多いので、注意が必要です。
ビタミンの効果は、決して派手なものではありませんが、不足の状態が続くと、からだにはさまざまな影響があらわれます。
特定のビタミンの過不足だけでなく、他の栄養素との兼ね合い、運動量、ストレス量など、大きな枠の中でとらえることも大切でしょう。
ビタミンB1を多く含む食品
(0.50mg/100g以上)
食品名 | ビタミンB1含有量 |
---|---|
強化米 | 125.00 |
米ぬか | 2.50 |
酵母(乾燥) | 2.30 |
ひまわりの種(乾) | 2.10 |
小麦はいが | 2.10 |
強化押し麦 | 1.50 |
強化切断麦 | 1.50 |
あまのり(焼きのり) | 1.10 |
ぬふん | 1.00 |
干しやつめうなぎ | 1.00 |
ごま(乾) | 0.95 |
ボンレスハム | 0.90 |
ブラジルナッツ(いり) | 0.86 |
落花生(乾) | 0.85 |
やつめうなぎ(生) | 0.85 |
豚そともも(脂身なし) | 0.85 |
焼き豚 | 0.85 |
豚ヒレ | 0.84 |
大豆(国産、乾) | 0.83 |
豚もも(脂身なし) | 0.80 |
豚ロース(脂身なし) | 0.78 |
きな粉 | 0.76 |
豚もも(脂身つき) | 0.76 |
豚そともも(脂身つき) | 0.76 |
うなぎかば焼き | 0.75 |
すっぽん(肉) | 0.75 |
豚かた(脂身なし) | 0.75 |
中力粉 | 0.75 |
えんどう(乾) | 0.72 |
強力粉(学校給食用) | 0.70 |
りょくとう(乾) | 0.70 |
ショルダーハム | 0.70 |
酵母(生) | 0.70 |
豚ロース(脂身つき) | 0.69 |
豚かた(脂身つき) | 0.66 |
たらこ(焼き) | 0.65 |
豚かたロース(脂身つき) | 0.65 |
豚ひき肉 | 0.65 |
松の実(いり) | 0.61 |
たらこ(生) | 0.60 |
ロースハム | 0.60 |
干しいわのり | 0.60 |
ロースベーコン | 0.59 |
ショルダーベーコン | 0.58 |
干ししいたけ(乾) | 0.57 |
あおのり(素干し) | 0.56 |
うなぎ白焼き | 0.55 |
ふな(生) | 0.55 |
プレスハム | 0.55 |
玄米 | 0.54 |
えごま(乾) | 0.54 |
カシュウナッツ(いり味付け) | 0.54 |
豚バラ(脂身なし) | 0.52 |
おおむぎ(玄皮麦) | 0.50 |
そば(表層粉) | 0.50 |
いんげんまめ(乾) | 0.50 |
ささげ(乾) | 0.50 |
そらまめ(乾) | 0.50 |
すじこ | 0.50 |
ぼら(からすみ) | 0.50 |
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